両親は最近Youtubeでボードゲームの紹介動画を観るのにはまっているらしく、やってみたいなどと夕飯時に話していた。どうやらボケ防止になるからとのことらしい。なるほど。まだボケ始めるような歳でもないと思ったけど、退職してから頭を使う頻度が減ったからということだろうか。
僕の方はというと、一時友人と酒を飲みながらボードゲームやカードゲームをやっていたことがあり、ボードゲームが結構面白いことは知っていた。普段からテレビゲームの方をよく遊んでおり、ボードゲームは友人が持ってくるぐらいでないと遊ぶことはないけど、紙と小道具でここまで盛り上がれるのかと衝撃を受けた覚えがある。
『カタン』はそういった時に友人達と遊んだゲームの一つであり、僕が特に気に入っていたものだった。反射神経が要らず、戦略性がありつつ疑心暗鬼にならなくて良い気軽さが性格にあっていたのか。なんにせよ両親とのボードゲームの話で僕が思い出したのは『カタン』だったので、なんとなくamazonで検索してみた。ボードゲームの中では結構有名なものらしい。それにちょうどセール中で半額程になっていた。もはや迷う理由もなくスムーズにポチることができた。
『カタン』の内容はざっくり説明すると、サイコロの目で得られる「資源」を使って「建築物」を建て自分の勢力を豊かにさせるというものだ。「開拓地」や「都市」といった建築物は建てればポイントとなり、このポイントを貯め切った人の勝ちということである。また同時にこれらの建築物はより多くの資源を得るための足掛かりにもなる。他にもポイントを貯める方法は幾つかあるけど、何をするにもまず資源が必要になってくる。
僕がこのゲームで良いと思うのは、資源の交換を他の人と交渉できることだ。自分の番であれば自分からも他の人からも交渉できる。交換する資源の内容も自由に決められる。必要な資源がまんべんなくゲットできることは中々ないので、欲しい資源を求めて交換を持ちかけるタイミングは割とよくある。
この交渉が相手と話す機会をいい感じに作ってくれる。交渉というと仰々しいけど、単に「〇〇あげるから〇〇くれない?」と一応聞いとくみたいなものだ。問いかけた相手がそれについて考えてくれて、少なくとも「はい」か「いいえ」で応えてくれる。交渉が成立しなくても誰かが機嫌を損ねるようなものでない、丁度いいバランスのやりとりだと思う。
交渉以外の会話はいつでも自由にできる。誰かがとび抜けて勝利に近づきだすと、協力して阻止しようみたいに団結するし、不慣れな人がいたら、こうすることもできるというようなアドバイスもできる。それぞれが独立していて、相手を蹴落とすことより自陣の発展を優先するルールだからか、趨勢に運がだいぶ絡んでくるからか、終始ゆるい空気感で会話し、遊ぶことができる。やり込むとそうでもないのかもしれないけど、素人目に見るとそんな感じだった。
別にこれを使って冷え切った家族仲を復活させようとかそういうことじゃない。普段から会話はするし、ほぼ毎日夕飯は皆で食べている。自分で言うのもなんだけど、むしろ仲は良いほうだと思う。けど大人になって思うのは、皆で何か一つのものを共有する時間は確実に減ったということだ。
保護する側される側という関係でもなくなり、特に些細なことで衝突するようなこともなくなり、お互いに安心して生活できる間柄になったのだと思う。何かきっかけがあるわけでもなく、それぞれが歳をとって丸くなるという、よくあることなんだろう。でもそのせいか夕飯が終わってしばらくすると、解散してそれぞれの生活リズムに入っていくような感じになる。
それは決して悪くないごく普通のことなんだけど、時折ふと少し寂しく思うこともある。もし他の人の興味が引けたなら、ボードゲームを囲んであれやこれやと会話してみてほしい。時間が溶けて、内容は細かく覚えてなくても、いつも近くにいる人達と、いつもよりずっと多く話せたなあと思った。
遊び終えた後だけど、何もないまま箱の中に詰め込むと、次開けたときごちゃごちゃした感じになって分けるのが億劫になりそう。ジップ付きの小さい袋に分けて入れるのがおすすめ。いい感じにピッタリ入るし、武器として振り回しても中身が散らかることはないと思う。